H.S factory

「このバイク、曲がりにくい」は誰のせいなのか

2026年8月14日

曲がりにくさをタイヤやステアリング、足回り全体から考える鉛筆スケッチ

「このバイク、なんだか曲がりにくいんです」

整備の相談としては、非常に曖昧な言葉です。

ですが、H.S factoryではこうした言葉を軽く扱いたくありません。

なぜなら「曲がりにくい」という感覚の中には、車両の状態を考えるためのヒントが含まれていることがあるからです。

ただし、

曲がりにくい=サスペンションが悪い

と決めることもできません。

まして、

曲がりにくい=ライダーが下手

でもありません。

まず、その二つを切り離して考える必要があります。

「曲がらない」にもいろいろある

ライダーが使う「曲がらない」という言葉には、いくつもの感覚が含まれます。

寝かし込みが重い。

一度倒れ始めると急に入っていく。

コーナー途中で外へ膨らむ感じがする。

ハンドルへ余計な力が必要に感じる。

以前と同じように乗っているのに、何か違う。

整備側からすると、これらは同じ症状とは限りません。

だから最初から原因を決めるのではなく、

その人が何を「曲がりにくい」と感じているのか

を聞くところから始まります。

最初にサスペンションを回さない

スポーツバイクでは、曲がりにくいと感じるとサスペンションの調整へ意識が向きやすくなります。

プリロード。

伸び側減衰。

圧側減衰。

車高。

確かにセッティングによって車体の特性は変わります。

でも、その前に確認したいものがあります。

タイヤの空気圧。

タイヤの摩耗形状。

装着されているタイヤのサイズや状態。

ホイールまわり。

ステアリングまわり。

フロントフォークを含めた足まわりの状態。

そのほか、車体側に異常や不自然な点がないか。

基準となる状態が崩れているのに、その上からセッティングを変更すると、原因をさらに分かりにくくしてしまうことがあります。

だから、

セッティングの前に整備。

これはH.S factoryが大切にしたい順番です。

摩耗したタイヤに合わせてサスペンションを変えたら?

極端な例を考えてみます。

長く使われ、形状が大きく変化したタイヤを装着したバイクがあるとします。

ライダーは「最近曲がりにくい」と感じています。

そこでタイヤには触れず、サスペンションを変更して「曲がる方向」へ持っていったとします。

その状態で後日タイヤを新品へ交換したら、どうなるでしょう。

今度は必要以上に車体の動きが変わってしまう可能性があります。

つまり、

劣化や摩耗によって発生した変化を、セッティングで帳尻合わせしてしまった

ということです。

こうしたことを避けるためにも、まず現在の状態を確認する必要があります。

車両が正常なら、次は人の領域になる

車両を確認した結果、大きな問題が見つからないこともあります。

その場合、

目線なのか。

速度の作り方なのか。

ブレーキ操作なのか。

身体の使い方なのか。

操作のタイミングなのか。

そうしたライダー側の要素が関係している可能性が出てきます。

ここから先はMSSFの領域です。

H.S factoryが整備台の上で、

「あなたの乗り方が悪いですね」

と決めつける話ではありません。

同様に、ライディングだけを見て、

「バイクは正常でしょう」

と決めるべきでもありません。

人を見る場所と、機械を見る場所を分ける。

そのうえで情報をつなげる。

これができることは、MSSFとH.S factoryが連携している強みのひとつだと考えています。

「違和感」は立派な情報

整備相談では、

「うまく説明できないんですけど……」

と言われることがあります。

それで構いません。

整備士が欲しいのは、専門用語ではありません。

「去年より重く感じる」

「タイヤ交換してから違う」

「高速道路では平気だけど山道だと怖い」

「右は気にならないけど左だけ変な感じがする」

そういう情報です。

違和感には理由があるかもしれません。

もちろん、何も異常が見つからないこともあります。

それでも、

最初から人のせい、最初からバイクのせい、と決めない。

そこから始めることが大切だとH.S factoryは考えています。

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Article by tomo-nu