タイヤ交換で外した古いタイヤ。
新品を装着すれば役目を終えた部品ですが、整備する側から見ると、そのタイヤには情報が残っています。
どこが減っているのか。
左右で違いはあるのか。
形状がどのように変化しているのか。
表面はどうなっているのか。
ただし、ここで注意したいことがあります。
タイヤの摩耗を見て、
「これは空気圧が低かったから」
「これはサスペンションが悪い」
「これは乗り方の問題」
と一発で断定することはできません。
H.S factoryでは、タイヤの摩耗を答えではなく手掛かりとして考えます。
タイヤには、たくさんの条件が同時に作用する
タイヤの摩耗には、さまざまなものが影響します。
空気圧。
車重。
積載。
道路。
速度。
気温。
タイヤの種類。
走行距離。
サスペンション。
そして、ライダーがどのようにバイクを使っているか。
同じ車種、同じタイヤでも、使われ方が違えば同じ減り方をするとは限りません。
だから摩耗だけを見て原因をひとつに決めてしまうと、判断を間違えることがあります。
「真ん中が減っている=下手」ではない
タイヤの話になると、ときどき妙な価値観が入ってきます。
端まで使っている方が偉い。
中央だけ減っているのは格好悪い。
そんなものです。
でも整備する側からすれば、タイヤは勲章ではありません。
高速道路を使って長距離ツーリングをするバイクなら、中央部を使う時間が長くなるのは自然です。
通勤で毎日まっすぐ走る時間が長ければ、それもタイヤに現れます。
大切なのは、
その使い方に対してタイヤがどうなっているか
です。
端まで使っているかどうかでライダーを評価する必要はありません。
タイヤが変わると「普通」も変わる
タイヤは徐々に摩耗します。
そのため、ライダーは変化したタイヤに少しずつ適応していきます。
そして交換時、新品タイヤを装着した瞬間に、
「バイクってこんなに曲がったっけ?」
と感じることがあります。
これは新品タイヤが魔法のように性能を上げたというより、それまで摩耗した形状へ身体が慣れていた可能性があります。
この感覚は重要です。
なぜならライダーが「車体の問題」だと思っていたものが、実はタイヤの状態から来ていた、ということもあるからです。
逆もあります。
タイヤを新品にしても違和感が残るなら、別の場所を見る必要が出てきます。
サーキットのタイヤは、さらに条件が増える
サーキット走行では、タイヤ表面にさまざまな変化が現れます。
そこで写真一枚を見て、
「これは○○が原因です」
と言い切る情報も世の中にはあります。
しかし実際には、タイヤの種類、路面温度、走行ペース、空気圧、サスペンション、コース特性など、多くの条件が関係します。
タイヤだけを見ればすべて分かるわけではありません。
だからこそ、
どこを走ったのか。
どのくらい走ったのか。
そのとき何を感じていたのか。
車両はどのような仕様だったのか。
そうした情報と一緒に考える必要があります。
ここでもMSSFとH.S factoryの役割は分かれます。
操作や走行について考えるならMSSF。
車両、タイヤ、足まわりについて確認するならH.S factory。
そして必要なら、その情報をつなぐ。
外したタイヤも整備の情報になる
タイヤ交換は、新品を取り付ける作業だけではありません。
それまで使われていたタイヤを見ることも、車両を知るためのひとつの機会です。
「何km使ったか分からない」
「空気圧はほとんど見ていなかった」
「中古で買ったときから付いていた」
それも情報です。
分からないものは分からない。
その状態から、次のタイヤでは記録を取ってみる。
空気圧を見る。
走行距離を見る。
使い方を聞く。
そうして少しずつ、その車両にとっての基準を作っていく。
タイヤの摩耗を占いのように読むのではなく、車両が残した履歴のひとつとして扱う。
H.S factoryでは、そんな見方をしていきたいと思っています。
