バイクをもっと良くしたい。
そう考えたとき、最初に思い浮かぶのは何でしょう。
タイヤを変える。サスペンションを変える。ブレーキを強化する。マフラーを変える。エンジンに手を入れる。
もちろん、それらが必要になることもあります。
ただ、H.S factoryでは、その前に確認したいことがあります。
今、そのバイクは本来の状態でちゃんと走っているのか。
ここを飛ばしてしまうと、高価な部品を付けても問題の本質が見えなくなることがあります。
「ちゃんと走る」は、遅く走るという意味ではない
ここでいう「ちゃんと走る」は、速い・遅いの話ではありません。
ライダーがブレーキを入力したら、それに対して自然に減速する。
ハンドルへ必要な操作を加えたら、車体が予想できる動きをする。
アクセルを開ければ、それに応じて車体が前へ進む。
毎回の操作に対する反応が、大きくばらつかない。
こうした状態を作ることです。
これは街乗りでも、ツーリングでも、サーキットでも変わりません。
ライダーは「今乗っているバイク」に慣れてしまう
車両の状態が少しずつ変化していると、乗っている本人が気付かないことがあります。
タイヤは少しずつ摩耗します。
空気圧も変化します。
ブレーキの感触も、チェーンの状態も、足まわりも、昨日突然別物になるとは限りません。
少しずつ変わります。
そして人間は、その変化に合わせて乗ってしまいます。
例えば、本来より曲がりにくくなったバイクに乗り続けていれば、ライダーは無意識に「このくらい操作しないと曲がらない」と学習していきます。
ブレーキの初期反応が悪くなっていれば、それに合わせて強く入力するようになるかもしれません。
つまり、
車両側の変化を、ライダー側が補正しながら乗っていることがある。
これは整備を考えるうえで、とても重要なポイントです。
上達しようとするなら、車両側にも「基準」が必要になる
MSSFでは、ライダー側の操作や判断、そして基礎を繰り返して身につけることを大切にしています。
一方、H.S factoryが担当するのは車両側です。
ここには接点があります。
同じ操作をしたとき、バイク側の反応が毎回大きく違っていたら、ライダーは何を基準に練習すればいいのでしょう。
逆に、車両の状態がある程度整っていれば、
「今の動きはバイクによるものなのか」
「自分の操作によるものなのか」
を切り分けやすくなります。
だから、ライディングを考えることと整備を考えることは、まったく別の話ではありません。
ただし、役割は違います。
ライダーを整えるのがMSSF。
バイクを整えるのがH.S factory。
H.S factoryがライディングスクールになる必要はありません。
MSSFが整備工場になる必要もありません。
それぞれの専門領域を持ったうえで、人と機械の接点を考える。
そこに両者が一緒にいる意味があります。
セッティングより前に整備がある
「もっと曲がるようにしたい」
「ブレーキを効くようにしたい」
「サーキットでもっと走りやすくしたい」
こうした相談に対して、いきなりセッティングを変更するのが正解とは限りません。
現在のタイヤはどうなっているのか。
空気圧はどうか。
ブレーキは正常に作動しているか。
足まわりに問題はないか。
車両に本来必要な整備ができているか。
まずそこを見る。
正常な状態を作ったうえで、それでも目的に対して足りないものがあるなら、初めてセッティングや部品変更を考える。
順番の問題です。
ノーマルだから正常とは限らない。改造車だから悪いわけでもない
ここも誤解されやすいところです。
ノーマル車だから正常とは限りません。
逆に、たくさん部品が交換されているから問題があるとも限りません。
大切なのは仕様ではなく、
「現在どういう状態になっているか」
です。
H.S factoryでは、そこから車両を見ていきたいと考えています。
速くする前に、ちゃんと走れるようにする。
高性能な部品を付ける前に、その部品がきちんと仕事をできる状態を作る。
地味ですが、バイクを長く、安全に、そして楽しく乗るためには、こうした基本が一番大切なのかもしれません。
