H.S factory / 整備ノート
トゥデイAF61のVマチックを図解|ベルトとクラッチ
スクーターは、シフトペダルを操作しなくても発進し、速度に合わせて走り続けます。その裏側では、Vベルトの走る位置を前後のプーリーで変え、遠心クラッチで後輪へつなぐ仕組みが働いています。ホンダ・トゥデイの公開諸元を手がかりに、CVTを部品と数字から読み解いてみましょう。
当店掲載のトゥデイは2007年式・キャブレター車です。この記事の数値はHondaが公表した2002年発売時のAF61型トゥデイの参考諸元で、掲載車両を分解・測定した結果ではありません。実車の情報は販売車両ページでご覧いただけます。
図はHonda公式資料をもとに作成したVマチックの概念図です。ベルトやプーリーの形状・寸法を示す実測図ではありません。
エンジンから後輪まで、駆動はどう伝わる?
クランクシャフト → ドライブプーリー → Vベルト → ドリブンプーリー → 遠心クラッチ → クラッチアウター → ドライブシャフト → 減速ギヤ → 後輪。Vマチックは、ベルトを介した変速と、発進時に動力をつなぐクラッチが組み合わさった駆動系です。
| 部品 | 役割 | 見ているポイント |
|---|---|---|
| ドライブプーリー(エンジン側) | エンジン回転をベルトへ伝え、ベルトの走行半径を変える | フェイス面、動く部品の摺動 |
| ウェイトローラー | 回転で生じる遠心力を使い、ドライブ側の可動フェイスを動かす | 摩耗や偏った当たり方 |
| Vベルト | 2つのプーリーの摩擦で駆動力を伝える | 幅、表面、ひび・欠け、品番 |
| ドリブンプーリー(後輪側) | ベルトの位置を前側と連動させ、駆動軸へ力を渡す | 可動部の動き、フェイス面 |
| 乾式遠心クラッチ | エンジン回転に応じて、クラッチアウターへ動力をつなぐ | シューの摩耗、接触面、つながり方 |
| 減速ギヤ | クラッチから受けた回転を、後輪に適した回転・力へ整える | 異音、軸の状態、車種ごとの整備基準 |
ウェイトローラーが、ベルトの「走る径」を変える
プーリーは、向かい合う円すい状の面でVベルトをはさんでいます。向かい合う面のすき間が狭まると、ベルトは外側へ押し上げられ、広がると内側へ下がります。ベルトそのものが伸び縮みして変速するのではなく、プーリー上でベルトが走る半径を変えるのが要点です。
エンジン側では、回転が上がるとウェイトローラーに遠心力がかかり、外側へ移動します。その力で可動フェイスが動き、ドライブプーリー上のベルト位置が外周寄りへ移ります。後輪側のドリブンプーリーでは、ベルトが反対側の位置へ移り、ベルトの張りを保ちながら変速比が連続して変化します。実際の動きや部品寸法は、車種・型式によって異なります。
発進時はエンジン側のベルト位置が内側、後輪側が外側になる側から始まり、力を出しやすい変速比になります。速度が上がるにつれてエンジン側ではベルトが外側へ、後輪側では内側へ移り、巡航側の変速比へ連続的に変わります。段付きギヤのように「1速から2速へ」と切り替える感触がないのは、このためです。
AF61の公表値を掛け算すると、減速の関係が見える
Hondaの2002年発売時のトゥデイ(BA-AF61)の諸元では、変速機は無段変速式(Vマチック)、クラッチは乾式多板シュー式とされています。数値を分けて見ると、Vマチックの変速と、後輪手前の固定減速が別の役割だと分かります。
| 公表項目 | AF61参考値 | 何を表すか |
|---|---|---|
| Vマチック変速比 | 2.850〜0.860 | 前後プーリーで連続的に変わる範囲 |
| 一次減速比 | 3.600 | クランクから駆動系への固定減速 |
| 二次減速比 | 3.769 | 駆動軸から後輪までの固定減速 |
| 参考総減速比 | 約38.7〜約11.7 | 上の3つを掛けた計算値 |
計算例:2.850 × 3.600 × 3.769 ≒ 38.7、0.860 × 3.600 × 3.769 ≒ 11.7。変速比と減速比を掛け合わせた、クランク回転と後輪回転の関係を読むための参考計算です。これは実際の最高速度や、販売車両を測定した結果を示す数値ではありません。エンジン回転、負荷、タイヤ、車両の状態なども走りに関わります。
クラッチは「変速」ではなく「発進の接続」を受け持つ
トゥデイの乾式多板シュー式クラッチは、エンジン回転の上昇に伴ってクラッチ側の回転数が高まると、シューが遠心力で開き、クラッチアウターに接触して動力を伝えます。つまり、プーリーとベルトが変速比を作り、遠心クラッチが発進時の接続を受け持つ、別々の仕事です。
そのため「発進時に振動する」「回転の上がり方に対して加速がそろわない」と感じても、症状だけで交換部品を一つに決めることはできません。ベルトやプーリー、ローラー、クラッチの状態に加えて、エンジン側の調子や使われ方も合わせて確認します。
症状は手がかり。部品名だけで原因を決めない
| 気になっていること | 点検で確認する範囲 |
|---|---|
| 発進時のつながりや振動が気になる | クラッチシュー・アウター、ベルトの動き、アイドリングなどを確認します。 |
| エンジン回転と加速が合わない | ベルト幅や表面、ローラーの摩耗、プーリーの動き、クラッチの接続状態を確認します。 |
| 駆動ケース付近から音がする | ベルト周辺だけでなく、軸受や減速ギヤなど音の出る位置を切り分けます。 |
同じように感じる症状でも、原因は一つとは限りません。走行中に症状が急に強くなったり、滑りや異音が続いたりする場合は、無理に走り続けずにご相談ください。
交換時期や基準値は、車種・型式に合わせて確認
ベルトの幅や摩耗限度、ローラー・クラッチの判定方法は車種ごとの整備資料で確認します。「原付なら一律何キロで交換」とは決められません。型式や仕様の違い、過去の交換歴、走行の仕方によっても必要な確認が変わります。
2007年のトゥデイには、キャブレター仕様とPGM-FI仕様の発表があり、年式だけでは燃料供給方式を特定できません。当店掲載車両は、確認済みの車両情報に基づくキャブレター車です。整備や部品の適合を判断する際は、車台番号・型式と実車の装備を照らし合わせます。
H.S factoryでは、お客様の乗り方や気になる症状を伺い、実車で確認できた状態と車種別の基準を照らし合わせて、整備内容をご説明します。まずはトゥデイの販売情報・整備記録をご覧いただくか、お問い合わせからご相談ください。
参考にしたHonda公式資料
- 簡単操作と高性能を両立した無段変速機(Vマチック) — 基本構造、駆動力の伝達、プーリー・ウェイトローラーの説明。
- 新型スクーター「Today」を94,800円で新発売(2002年) — BA-AF61、Vマチック、クラッチ形式と変速比・減速比。
- 原付スクーター「Today」のカラーバリエーションを変更(2007年2月)
- 原付スクーター「Today」に電子制御燃料噴射装置を採用(2007年8月) — PGM-FI仕様の発表情報。
